総合診療専門医コース
教育プログラム・コース
概要
本コースは、様々な症候や健康問題に対して包括的な診療ができる医師の養成を目的としています。
大学病院および関連病院における研修では、ほとんどの外来疾患は病歴で診断できるという立場から、実施可能な検査が限られた地域の診療所でも適切な診療ができるように、病歴を中心とした医療面接に重点を置いた指導を行っています。
入院症例に対しても同様に、医療面接で必要十分な鑑別を挙げるトレーニングを行い、施行する検査の目的を明確にして、その結果の解釈も詳細に分析します。
診療所研修では地域のかかりつけ医として、急性期から慢性期、予防・健康増進、緩和ケア、在宅医療まで幅広い領域の研修を行うことが可能です。
診療以外では、カンファレンスで自分が経験していない症例を擬似体験することで、効率的に経験を積むことができます。また、症候学、感染症、生活習慣病をはじめとした高頻度疾患、抄読会など様々な勉強会を開催しており、年間を通して密度の高い研修が受けられます。
選択ローテート中に、臨床疫学のe-learningや本院高齢社会医療政策研究部の授業を受け、学会発表や症例報告の論文作成も目指します。
対象者
専攻医(受け入れ可能人数:年間10名)
研修プログラムの目的
総合診療医の養成
専門医資格の取得
取得可能な専門医資格
日本プライマリ・ケア連合学会プライマリ・ケア認定医・家庭医療専門医
日本内科学会認定内科医・総合内科専門医
修業年限
3年間
・総合診療専門研修(2年間)
・総合診療医に必要な領域別研修(1年間)
年間スケジュールの一例
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4〜6月 |
7〜9月 |
10〜12月 |
1〜3月 |
1年目 |
大学または関連病院での研修 |
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2年目 |
大学または関連病院での研修 |
内科研修 |
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3年目 |
診療所研修 |
救急科研修 |
小児科研修 |
1年目は大学病院または関連病院で研修します(総合診療専門研修Ⅱ)。
それ以降は研修登録医、研究生、もしくは医員の身分にて外来研修を継続します。
2年目、3年目のうち6ヶ月は地域診療所研修(総合診療専門研修Ⅰ)を行います。
3年間の研修期間のうち、6ヶ月〜1年は地域関連病院にて総合診療専門研修Ⅱおよび内科研修を行います。
週間研修スケジュールの一例
曜日 |
午前 |
午後 |
月 |
プリセプティングによる |
青葉病院内科合同カンファレンス (月1回) |
火 |
同上 |
勉強会 |
水 |
同上 |
抄読会 |
木 |
同上 |
外来カンファレンス |
金 |
同上 |
・英語カンファレンス ・外国人教員による病歴・身体診察ワーク ショップ ・米国老年医学専門医によるGeriatric medicine lecture |
総合診療部ローテート中の勉強会の一例(平成26年度実績)
(1)プライマリ・ケア勉強会
高血圧症、糖尿病の初診時の対応および治療、気管支喘息、一次性頭痛、肝機能異常、甲状腺機能異常、脂質異常症/高尿酸血症、血球異常(赤血球/白血球)、骨粗鬆症、血尿/蛋白尿、血液ガス
(2)感染症勉強会
感染症の基礎、細菌の分類(全8回)、抗菌薬について(全3回)、症例検討(尿路感染症)
(3)身体診察・検査
耳鏡、眼底鏡、身体診察:神経診察、胸部、腹部、頭頸部、整形外科、皮膚科、超音波検査(腹部、心臓、甲状腺、リンパ節)、フレンツェル眼鏡、肛門鏡
(4)症候学レクチャー
しびれ、頭痛、めまい、腹痛、不明熱、浮腫、歩行障害、リンパ節腫脹、悪心・嘔吐、失神、関節痛、下痢、睡眠障害、倦怠感
(5)診療所ケースカンファレンス
緩和ケア、褥瘡、行動変容
コース修了後の進路
大学病院や関連病院に勤務、あるいは総合診療医としての開業が主な選択肢になります。日々の診療におけるクリニカルクエスチョンを解決するために、大学院に入学して臨床研究を行うことも可能です。有資格者には米国臨床留学を推薦することもあります。
これまでの履修者数
履修者の意見
履修者①
千葉大学の総合診療部の特色の一つに屋根瓦式の指導方法があります。原因疾患や疾患 の鑑別、検査結果の解釈についてはもちろんの事、患者さんの受療行動や社会背景など診断に必要な事を一つ一つ丁寧に指導してくれ、他には無い指導システム です。年代の近い先生からの指導のため質問も非常にしやすいです。
1日24時間では足りない程勉強する事が多く、週に1回の生坂先生の症例カン ファレンスを始め、医局員によるレクチャーもあり、勉強をする環境としてはこれ以上ないと思います。 学生や研修医の方にも患者さんの問診をとってもらうため、一人一人の患者さんに対する対応など医学知識以外にも勉強になる事が多いと思います。
履修者②
総合診療部での診療の特徴は、常にbiological 、psychological 、social の各方面から症例の問題点にアプローチする点、屋根瓦式のチーム制で診療を行い、 常にフィードバックを得られる点にあります。特に未知の訴えがあっても、的を絞った問診や身体診察で、器質的な問題か精神的な問題かをつかむことができるというのは、当部で得られた視点です。
また、疑問点はその場で上級医に質問できますし、自身も研修医などに教えることで、得た知識をより着実にできる点も魅力といえるでしょう。
さらに、1症例に対し、主訴を掘り下げ、深く、広く鑑別をおこなうことで、各疾患の類似点、相違点を明確にし、同様の訴えがある症例をより早く、正確に鑑別できるようになります。
これらはいずれも1人ではできません。症例や知識を共有することで初めて到達できる領域を、当部で是非学んで頂きたいと思っています。
履修者③
千葉大学総合診療部の特徴として、生物心理社会モデルを重要視した診察をしていることです。そのため、各症候への系統的なアプローチの仕方だけでなく、受療行動や社会的背景も踏まえた臨床推論を学ぶことができます。
指導体制は屋根瓦方式をとっています。上級医の先生とディスカッションをしながら丁寧な指導を受けられ、上級医の問診をみることで病歴の“聞く技術”を学ぶことができます。
また、生坂先生のカンファレンスの他に、医局員や外国人医師によるレクチャーが定期的にあり、臨床推論を学ぶ環境としては最適だと思います。
ぜひ一度見学にきて、総合診療部の雰囲気や診療体制をみてください。