ご挨拶
先進国では急速に高齢化が進んでいますが、特に日本は高齢化率、高齢化のスピードが世界トップクラスの国として知られており、急速に進展する高齢化等に伴う医療課題への対応が喫緊の課題とされています。文部科学省は平成25年度に「未来医療研究人材養成拠点形成事業」を公募し、「リサーチマインドを持った総合診療医の養成」をテーマに15件の事業を選定し、千葉大学もその一つとして選ばれました。
高齢者は複数の臓器疾患を合併していることが多いため、在宅、診療所、病棟など様々な場での心理社会面を含めた臓器横断的な問題解決が出来る総合診療医が必要となります。これまでの医学教育および医師生涯教育は、臓器別専門医の育成を主としていたため、自分が専門とする領域の疾患か否かといった視点でのアプローチが一般的でした。
専門領域内か専門領域外かといった視点での診療では、様々な愁訴に対応しなければならない地域医療には対応が困難です。これまでは、専門領域外の診療スキルは医師個人の努力によりカバーされてきました。全人的な視点から診療する学生教育や、医育機関における医師生涯教育部門の整備は十分ではなく、そのために地域医療に興味を持つ多くの若者が大学を離れる結果を招き、近年では大学病院において地域を支える医療者を育成することが困難になりつつあります。大学を経由せずに地域で育った総合診療医も、学位や研究実績がないために医育機関でポジションを得ることができず、学生、研修医から見えにくい存在で終わってしまうケースもあります。
これまでに、千葉大学医学部附属病院総合診療部では、臓器横断的な診断能力を高める学習の仕組み作りに努め、全国から多くの若者を惹きつけながら、本院内で着実に総合診療医を育成してきました。今回、新たな専門医として認定されることになった総合診療医の量産に踏み切るために、医・薬・看と協働して地域に育成拠点を作り、これまでの育成方針を大きく前進させるプロジェクトを企画しました。地域と大学が一体となり、超高齢社会における地域包括ケアシステムに対応出来るリサーチマインドを持った優れた総合診療医を継続的に輩出し、医療水準を向上させ、国民の生活に貢献できるような仕組みを作りたいと考えております。